NotebookLMは、アップロードした資料に基づいてAIが回答を生成する、Googleの革新的なツールです。しかしその利便性の裏で「入力した情報が漏洩しないか」「データが勝手に学習に使われないか」といった不安を感じる方も少なくありません。特に業務で個人情報や機密情報を扱う場合、情報漏洩のリスクは無視できない問題です。

この記事では、情報漏洩に関して不安を抱えているあなたのために、NotebookLMに潜む情報漏洩のリスクから、具体的なセキュリティ設定、データを学習させないための方法、そして企業で安全に導入するためのステップまで、網羅的に解説します。この記事を読めば、NotebookLMを安全に活用するための知識と手順が身につき、情報漏洩の不安を解消できるでしょう。初心者の方でも分かりやすいように、丁寧に解説しますのでぜひ最後までご覧ください。

NotebookLMの情報漏洩リスクとは?

NotebookLMの情報漏洩リスクとは?

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どんな情報が漏えいしうるのか

NotebookLMにアップロードした、あらゆる情報が漏洩する可能性があります。NotebookLMはユーザーが提供した「ソース」と呼ばれる資料に基づいて回答を生成する仕組みであり、そのソースに含まれる情報が意図せず他者の目に触れる危険性があるからです。

具体的には、個人の氏名や住所、連絡先といった個人情報、企業の顧客リストや財務データ、未公開の開発情報などの機密情報が挙げられます。例えば、社外秘の企画書をソースとしてアップロードし、そのノートブックの共有リンクを誤って関係ない相手に送ってしまえば、企画内容がまるごと漏洩する事態になりかねません。NotebookLMに情報をアップロードする際は、その情報が外部に漏れても問題ないものか、事前に慎重に判断することが極めて重要です。

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企業利用で起こりがちなパターン

企業での利用においては、共有設定のミスや運用ルールの不備が情報漏洩の主な原因となります。ツールの利便性の高さから、ついセキュリティ意識が緩みがちになり、誰がどの情報にアクセスできるかの管理が曖昧になることが危険を招きかねません。具体的には、以下のようなパターンが考えられます。

  • 共有リンクの誤送信:本来共有すべきでない相手や、不特定多数が閲覧できる場所に、ノートブックの共有リンクを誤って送信・投稿してしまうケース。

  • 不適切な権限設定:情報を閲覧するだけでよい相手に対し、誤って「編集者」の権限を与えてしまい、重要な内容を意図せず改変・削除されてしまう危険性。

  • 退職者のアクセス権放置:退職した従業員のアカウントを無効化し忘れたため、退職後も社内情報にアクセスできる状態が続き、情報が持ち出されるリスク。

  • 個人アカウントの業務利用:会社が管理していない個人のGoogleアカウントで業務利用してしまい、機密情報が管理の及ばない場所に保管され、漏洩しても追跡が困難になる。

これらの事態を防ぐためには、組織として明確な利用ルールを定め、管理体制を構築することが不可欠です。

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個人利用と企業利用で異なる注意ポイント

NotebookLMを利用する際、主体(個人か企業か)によって守るべき情報の重要度やリスクの性質が大きく異なります。それぞれの特性を理解し、適切なセキュリティ意識を持つことが不可欠です。

1. 核心的な違い

  • 個人利用: 自身の「プライバシー情報の保護」が最優先。

  • 企業利用: 事業の根幹に関わる「機密情報の保護」が最優先。

2. 利用形態別の比較詳細

比較項目個人利用企業利用
最優先課題プライバシーの保護事業継続に関わる機密性の確保
守るべき情報・日記 ・家計簿 ・友人とのプライベートなやり取り・顧客情報 ・財務データ ・開発中の技術情報
漏洩時のリスクプライバシーの侵害経営への甚大なダメージ (社会的信用の失墜、損害賠償請求など)
影響範囲主に「個人」および「その周辺」に限定される。顧客、取引先、株主などを含め、社会的・法的な責任が生じる。

3. 結論

情報の漏洩が及ぼす影響範囲と責任の重さが全く異なるため、「企業利用」においては、個人利用とは比較にならないほど高度なセキュリティ意識と管理体制が求められます。

NotebookLMの情報漏洩を避けるためのセキュリティ設定

EU旗とロックのアイコンが表示されたタブレット。NotebookLMのGDPR対応や個人情報保護に関する安心感を表すイメージ。

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共有機能の仕組みと注意点

NotebookLMの共有機能は、リンクを知っている誰もがアクセスできるようになるため、その利用は極めて慎重に行うべきです。なぜなら、一度インターネット上に公開されたリンクは、どこでどのように拡散されるかを完全に制御することが不可能になるからです。

例えば、特定の取引先の担当者とだけ情報を共有するつもりでリンクを送ったとします。しかしその担当者が善意で別の人物にリンクを転送したり、誤って社内チャットに投稿したりする可能性はゼロではありません。もしそのリンクがSNSなどで公開されてしまえば、全く関係のない不特定多数の人々に、機密情報が閲覧されてしまうという最悪の事態も起こり得ます。

共有機能を使う際は、共有する相手を本当に信頼できる人物に限定し、情報共有の目的が完了した後は速やかに共有を停止することが望ましいです。常に「誰に、何を、なぜ見せるのか」を意識することが、情報漏洩を防ぐ上で不可欠です。

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アクセス権限の考え方

NotebookLMで情報を安全に共有するためには、「最小権限の原則」に従い、相手に必要最低限の権限のみを付与することが基本です。過剰な権限を与えてしまうと、相手の誤操作による情報の改ざんや、意図しない情報漏洩のリスクを高めてしまうからです。権限の種類と適切な使い分けは以下の通りです。

権限の種類できること適切な利用シーン注意点
オーナーノートブックの全ての操作(共有、削除、権限変更)ノートブックの作成者・管理者自身。最も強い権限のため、他者に付与することは基本的に避けるべきです。
編集者ノートの追加・編集、コメントの投稿複数人で資料を共同編集する場合。ソースの変更はできませんが、ノートの内容を自由に変更できるため、信頼できるメンバーに限定します。
閲覧者ノートブックの内容の閲覧、コメントの投稿上司への報告や、情報共有のみが目的の場合。内容の変更ができないため、最も安全な共有方法です。共有する際は、まずこの権限を検討しましょう。

共有する相手の役割や目的に応じて、常に最も制限された権限を選択することが、セキュリティレベルを高める第一歩となります。

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外部共有の可否と制限

企業向けのGoogle Workspaceアカウントを利用している場合、管理者が組織外のユーザーとの共有を制限できます。これは、従業員個人の判断で社内の機密情報が外部に共有されてしまうリスクを、組織的に防ぐための重要な機能です。

具体的には、Google Workspaceの管理コンソール画面から設定を行います。例えば、「組織外との共有を全面的に禁止する」「特定の信頼できるドメイン(許可した取引先など)とのみ共有を許可する」といった、柔軟なポリシー設定が可能です。この設定により、従業員が誤って社外の人物に共有リンクを送ろうとしても、システム側でブロックできます。一方で、個人の無料GoogleアカウントでNotebookLMを利用する場合は、このような管理者による一元的な制限機能はありません。そのため、利用者一人ひとりが注意深く管理することが求められます。

企業としてNotebookLMを導入する際は、まず情報システム部門などの管理者が、会社のセキュリティポリシーに合わせて共有設定を整備することが極めて重要です。

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データソースの扱い方

NotebookLMを安全に利用するためには、情報源となるデータソースの範囲を正確に把握し、不要な情報を含めないことが重要です。特にGoogleドライブと連携してソースを選択する場合、意図しないファイルまでNotebookLMからアクセス可能な状態になってしまう可能性があるからです。ソースの取り扱いについては、以下の点を心がけましょう。

  • 専用フォルダの活用:NotebookLMで利用するファイルは、あらかじめGoogleドライブ内に専用のフォルダを作成し、そこにまとめてからソースとして選択することを推奨します。これにより、関係のないファイルが混入するのを防ぎます。

  • アップロード前の内容確認:ファイルやテキストをソースとして指定する前には、必ずその内容を再確認し、個人情報や機密情報などが含まれていないかをチェックする習慣をつけましょう。

  • 定期的なソースの見直し:プロジェクトが終了するなどして不要になったソースは、NotebookLMのノートブックから速やかに削除してください。不要な情報を残し続けることは、漏洩リスクを高めるだけです。

データソースは情報の「入口」です。この入口の管理を徹底することが、内部での意図しない情報漏洩リスクを大幅に低減させることにつながります。

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初期設定チェックリスト

NotebookLMの利用を開始する際には、まずセキュリティ関連の項目を確認し、安全な状態からスタートすることが不可欠です。初期設定の不備が、後々の情報漏洩事故の直接的な原因となりうるため、以下のチェックリストを活用して設定を見直しましょう。

利用開始時のひと手間が、将来の大きなリスクを防ぎます。

  • デフォルト共有設定の確認:新しいノートブックを作成した際、共有設定が「制限付き(非公開)」になっているかを確認します。

デフォルト共有設定の確認

  • 公開リンクの禁止:原則として「リンクを知っている全員」への共有は使用しない方針を徹底します。意図せず作成された公開リンクがないか、定期的に確認することも有効です。

公開リンクの禁止

  • アクセス権限の最小化:誰かと共有する際は、必ず最も制限の強い「閲覧者」から設定を始め、業務上どうしても必要な場合に限り、申請ベースで「編集者」権限を付与する運用を検討します。

アクセス権限の最小化

  • Googleアカウントのセキュリティ強化:NotebookLMを利用するGoogleアカウント自体に、二段階認証プロセスを設定します。これにより、万が一パスワードが漏洩しても、不正アクセスを防ぐことができます。

これらのチェック項目を最初に確認・設定することで、安全な利用環境を構築し、安心してツールを活用するための土台を築くことができます。

NotebookLM「学習させない」設定のポイント

NotebookLM「学習させない」設定のポイント

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Workspaceアカウント利用時のデータ取り扱い

企業向けのGoogle WorkspaceアカウントでNotebookLMを利用する場合、アップロードしたデータや入力内容がAIモデルの学習に使用されることはありません。Google Workspaceの利用規約において、顧客データ(ユーザーが入力した情報)の機密性と所有権が保証されています。

具体的には、企業がNotebookLMにアップロードした顧客リスト、財務諸表、社外秘の技術文書といった機密情報が、Googleの汎用的なAIモデルを賢くするために勝手に使われることはないと、Google自身が明言しています。また、Googleの従業員がデータの中身を見る「人手レビュー」も、セキュリティ上の脅威への対応や、ユーザーからのサポート依頼があった場合など、ごく限定的な目的を除いて行われません。

機密性の高い情報を扱う企業がNotebookLMを導入する際は、情報保護の観点からGoogle Workspaceアカウントで利用することが強く推奨されます。

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個人アカウント利用時の注意点

個人向けの無料GoogleアカウントでNotebookLMを利用する場合、データがサービスの改善・開発のために利用される可能性があるため注意が必要です。Googleのプライバシーポリシーに基づき、ユーザーを特定できないように匿名化処理を施した上で、データが品質向上のために使われることがあります。そのため、データを学習させないためには、ユーザー自身による設定が重要になります。

  • アクティビティ管理の確認:Googleアカウント全体の「ウェブとアプリのアクティビティ」設定を見直し、NotebookLMでの活動が保存されないように設定することが有効な場合があります。

  • 機密情報を入力しない:設定による対策に加えて、最も確実な方法は、個人情報やパスワード、公開できないプライベートな内容など、そもそも機密性の高い情報を入力しないことです。

  • 定期的な履歴の削除:NotebookLMのアクティビティ履歴を定期的に確認し、不要になったデータはこまめに削除する習慣をつけることもリスク管理につながります。

個人で利用する際は、これらの設定による対策と、利用者自身の「重要な情報は入力しない」という意識の両方を持つことが不可欠です。

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社内ガイドラインへの落とし込み

NotebookLMを企業で安全に利用するためには、従業員一人ひとりの判断に任せるのではなく、組織として明確な利用ルールを定めることが不可欠です。なぜなら、従業員ごとにセキュリティ意識や知識のレベルが異なると、組織全体のセキュリティレベルにばらつきが生じ、思わぬところから情報漏洩のリスクが生まれてしまうからです。

具体的には、社内ガイドラインとして

  • NotebookLMの利用目的の範囲(例:議事録の要約、公開情報の調査のみ)

  • 入力して良い情報と禁止する情報の明確な定義

  • 社外の人物と共有する際の申請・承認フロー

  • 万が一問題が発生した場合の報告手順

などを文書化します。例えば「顧客の個人情報やマイナンバーは絶対に入力禁止」「社外との共有は原則禁止とし、必要な場合は情報システム部の承認を得ること」といった、誰にでもわかる具体的なルールを設けることが重要です。作成したガイドラインはただ配布するだけでなく、全従業員にその内容を周知し理解を深めるための研修などを実施することで、初めて実効性のあるものとなります。

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入力禁止データを定義する

従業員が意図せず重要情報をNotebookLMに入力してしまうリスクを防ぐためには、情報の重要度に応じた分類基準を設け、何が入力禁止データにあたるのかを明確に定義することが対策の第一歩となります。判断基準が曖昧なままでは、従業員が「このくらいなら大丈夫だろう」と誤った判断をしてしまう可能性があるからです。情報分類の一例として、以下のようなテーブル形式でルールを定めることが有効です。

情報レベル具体例NotebookLMへの入力可否
レベル3:極秘情報個人番号(マイナンバー)、パスワード、未公開の決算情報、M&A情報禁止
レベル2:部外秘情報顧客リスト、取引先情報、詳細な人事情報、ソースコード原則禁止(管理者の許可を得て、匿名化した場合のみ可)
レベル1:社内情報社内向けの議事録、業務マニュアル、公開前の企画書許可(ただし、社外共有は禁止)
レベル0:公開情報プレスリリース、Webサイト掲載情報、公開済みの製品カタログ許可

この分類ルールを全社で共有し、NotebookLMを利用する前に「この情報はどのレベルにあたるか」をセルフチェックするプロセスを導入することで、情報漏洩のリスクを大幅に低減させることができます。

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共有・保管・削除の社内ルール

NotebookLMに入力された情報を安全に管理するためには、情報の作成から廃棄までの一連の流れ(ライフサイクル)を管理する社内ルールを定める必要があります。情報がいつ、誰によって、どのように扱われたかを追跡できなければ、万が一情報漏洩が発生した際に、原因の究明や迅速な対応が困難になるからです。具体的には、「共有」「保管」「削除」の3つの観点でルールを整備します。

  • 「共有」:誰にどの権限(閲覧者/編集者)で共有したかの記録を残すことを義務付けます。また、共有期間をあらかじめ定め、目的が完了したら速やかに共有を停止する運用にします。

  • 「保管」:プロジェクトが終了したノートブックなど、利用価値のなくなった情報をいつまでに削除するかを定義します(例:プロジェクト終了後1ヶ月以内に削除)。

  • 「削除」:手順を明確にし、担当者が確実に実行できる仕組みを整えます。削除した事実を記録として残すことも、監査の観点から重要です。

これらのルールを定め、定期的な監査(アクセス権の見直しなど)を行うことで、堅牢なセキュリティ体制を維持できます。

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現場で守れる運用にするコツ

せっかく策定したセキュリティルールも、現場の従業員に守られなければ意味がありません。ルールを実効性の高いものにするコツは、内容を過度に複雑にしすぎず、教育と周知を継続的に行うことです。非現実的で複雑なルールは形骸化しやすく、結局は誰も守らない「絵に描いた餅」になってしまうからです。

具体的な工夫としては、まずルールをシンプルにすることが挙げられます。「個人情報と顧客情報は絶対に入れない」のように、禁止事項を最小限に絞り、最も重要な核心部分を強調して伝えます。また、新入社員研修や全社向けの勉強会などで、定期的にセキュリティ意識を喚起する機会を設けることも重要です。その際、NotebookLMを安全かつ効果的に活用している部署の成功事例を紹介すると、従業員のポジティブな動機付けにつながります。さらに、使い方の判断に迷った際に気軽に相談できるヘルプデスク(情報システム部など)を設置することも、ルールの遵守率を高める上で有効です。

トップダウンでルールを強制するだけでなく、現場の従業員がその必要性を納得し、自発的にルールを守るような文化を育てていくことが、真に安全な運用を実現します。

NotebookLM Plusと他の生成AIのリスク比較

膝の上のタブレットを指で操作するビジネスパーソンの手元。NotebookLMをモバイル端末で利用する際のセキュリティ管理と情報漏洩対策をイメージした写真。

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NotebookLM Plus (Workspace) vs 他の生成AI (ChatGPT) リスク・機能比較

比較項目NotebookLM (Workspace版)ChatGPT (Team/Enterprise版)
① AIモデルの学習学習に使用されない ユーザーが登録した「ソース」のみを参照して回答。 ※汎用モデルの学習には使われない。学習に使用されない (※無料版・個人版は学習される可能性あり) インターネット上の膨大なデータで事前学習されている。 ※契約プランにより保証範囲が異なる。
② 共有の単位「ノートブック」単位 アップロードした資料群 + 会話のセット。 プロジェクトごとの共有に向く。「チャット」単位 特定の会話履歴(スレッド)のみ。 一時的なQ&Aの共有に向く。
③ 外部公開の制御ドメイン外への共有を「禁止」可能 管理者が設定すれば、操作自体をブロックできるため、誤送信(ヒューマンエラー)を防げる。共有リンクの制限機能あり Enterpriseプラン等では、ドメイン認証やリンク管理により外部流出をコントロール可能。
④ 監査ログGoogle Workspace 監査ログ 「誰が・いつ・どのノートを見たか/共有したか」を詳細に追跡可能。アクティビティログ 管理コンソールにて、メンバーの利用日時やメタデータを確認可能。

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モデル学習

生成AIにおける情報漏洩リスクを考える上で、「入力データがAIのモデル学習に使われるか」は非常に重要な論点です。NotebookLMはユーザーが提供したソースに基づいて回答しますが、ChatGPTは広範なデータで事前学習されたモデルであるという根本的な違いがあります。この動作原理の違いが、データの扱われ方やリスクに影響します。

具体的にはNotebookLMおよびNotebookLM Plusは、ユーザーがアップロードした「ソース」ファイルのみを情報源として回答を生成します。特にGoogle Workspaceアカウントで利用する場合、そのソースがGoogleの汎用AIモデルの学習に使われることはありません。一方、ChatGPTは、インターネット上の膨大なテキストデータで事前学習した汎用モデルが基盤となっています。無料版では入力した会話データがモデルの学習に使われる可能性がありますが、有料のTeamプランやEnterpriseプランでは、入力データが学習に使われないことが保証されています。

入力データがモデルの再学習に使われるか否かは、特に機密情報を扱う可能性がある場合のツール選定において、極めて重要な判断基準となります。

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共有範囲

各AIツールが持つ共有機能の仕組みを理解することは、意図しない情報漏洩を防ぐ上で重要です。NotebookLMはノートブック単位、ChatGPTはチャット単位での共有が基本となり、管理方法が異なります。サービスの設計思想の違いが、共有機能の単位や設定方法に差を生んでいるからです。具体的な特徴は以下の通りです。

  • NotebookLM / NotebookLM Plus:ソース(資料群)とそれに関する会話のセットである「ノートブック」単位で共有リンクを発行します。共有相手には「閲覧者」または「編集者」の権限を設定可能です。組織的な共有範囲の管理は、Google Workspaceの管理機能に依存します。

  • ChatGPT (Plus / Team):特定の会話の履歴(チャット)を共有するための「Shared Links」機能があります。TeamプランやEnterpriseプランでは、ワークスペース内での共有が基本となり、管理者が外部への共有を制限する設定も可能です。

どちらのツールが使いやすいかは、「どの範囲の情報を、誰と共有したいか」という具体的な利用シーンによって変わります。プロジェクト資料全体を共有したいならNotebookLM、特定の会話の流れだけを共有したいならChatGPTが適していると言えるでしょう。

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外部公開

いずれの生成AIツールも、ユーザーの操作ミスによって意図せず情報が外部に公開されてしまうリスクを抱えています。しかし、そのリスクを組織的にコントロールするための管理者機能には差があります。機密情報を扱う企業では、管理者による強力な外部公開制御機能を持つ企業向けプランの選択が必須です。

例えばNotebookLMをGoogle Workspaceアカウントで利用する場合、管理者は組織外のドメインへの共有をシステム的に完全に禁止することができます。この設定により、従業員が誤って社外秘のノートブックを外部に共有しようとしても、操作自体がブロックされるため、ヒューマンエラーによる情報流出を未然に防げます。同様に、ChatGPTのEnterpriseプランにも、ドメイン認証や共有リンクの厳格な管理機能が備わっており、組織外への情報流出を厳しくコントロール可能です。これに対し、無料版や個人向けの有料プランでは、ユーザー個人の注意深さに依存する部分が大きくなります。

企業のガバナンスを徹底する上では、こうした管理者による制御機能の有無が、ツール選定の重要な分かれ目となります。

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監査性

企業が生成AIツールを導入する上で、誰がいつ、どのようにツールを利用したかを追跡できる「監査性」は、セキュリティとコンプライアンスの観点から非常に重要です。インシデント発生時の原因究明や、不正利用の監視には、利用状況の記録(監査ログ)が不可欠だからです。各ツールの監査機能には、以下のような違いがあります。

ツール監査ログ機能の有無と内容
NotebookLM (Workspace版)有り。 Google Workspaceの標準機能である監査ログを通じて、誰がいつノートブックにアクセスしたか、共有設定を変更したかなどを管理者が追跡できます。
ChatGPT (Team/Enterprise版)有り。 管理コンソール画面で、メンバーごとのアクティビティログ(利用日時、会話内容のメタデータ等)を確認できます。
個人向けプラン (両ツール共通)限定的。 管理者向けの高度な監査ログ機能は提供されません。ユーザー自身が自分自身の利用履歴を確認できる程度に限られます。

組織として利用を統制し、何か問題が起きた際に説明責任を果たすためには、詳細な監査ログ機能を提供する企業向けプランを選ぶことが極めて重要です。

NotebookLMを企業で導入する3ステップ

NotebookLMを企業で導入する3ステップ

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PoCで確認すべきチェック項目

本格導入の前に、まずは限定的な範囲で試験導入を行うPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施することが重要です。PoCの目的は、単にツールの利便性を確認するだけでなく、自社のセキュリティ要件を満たせるかを実践的に検証することです。どんなに便利なツールでも、企業のセキュリティポリシーに準拠できなければ導入は認められません。

PoCの段階で確認すべきチェック項目としては、まず「利用するデータの種類は適切か」が挙げられます。例えば、公開情報や一般的な業務マニュアルのみをソースとして、特定の部署(例:マーケティング部)で議事録の要約やブレインストーミングに利用する、といったシナリオで検証します。次に、「想定される共有要件を満たせるか(部署内共有、プロジェクト内共有など)」、そして「インシデント調査に必要なログは取得できるか」といった監査要件も確認します。

PoCを通じて具体的な利用シーンにおけるリスクを事前に洗い出しておくことが、本格導入後の失敗を防ぎ、スムーズな展開につながります。

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権限・共有設計の最適な方法

NotebookLMを企業で安全に運用するための権限・共有設計は、「最小権限の原則」を徹底し、外部との共有を原則として禁止することが基本となります。不要な権限や安易な共有は、情報漏洩の直接的な原因となるため、初期設定の段階から厳しく制限しておくべきです。具体的な設計方法としては、以下のルールを導入するのがおすすめです。

  • デフォルト権限の厳格化:従業員が新しいノートブックを作成した際のデフォルトの共有設定は、「自分のみアクセス可能(制限付き)」に設定します。

  • 共有範囲の限定:情報の共有は、部署やプロジェクトチームなど、あらかじめ定義された閉じたグループ内での利用を基本とします。

  • 権限付与のプロセス化:共有する際の権限は「閲覧者」を標準とし、ノートの編集が必要な場合は、上長や管理部門への申請を経て「編集者」権限を許可する、といった申請・承認プロセスを設けます。

  • 外部共有の原則禁止:取引先など、社外との共有は原則として禁止します。業務上どうしても必要な場合は、共有する情報の内容を管理部門がレビューし、期間限定で許可するなどの特別な手続きを定めます。

これらの厳格な権限設計とレビュープロセスを組み合わせることで、ツールの利便性を大きく損なうことなく、セキュリティレベルを高く維持できます。

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導入後の定期点検

NotebookLMを導入したらそれで終わりではなく、その後の継続的な点検と教育がセキュリティ体制を維持する上で不可欠です。組織の変更(人事異動や退職)や、ツールのアップデート、新たなサイバー攻撃の出現など、環境は常に変化しており、運用ルールや設定もそれに合わせて見直す必要があります。

具体的には、まず半年に一度などの頻度で、全ノートブックのアクセス権限を見直す「アクセス権の棚卸し」を実施します。これにより、不要になった共有設定や、退職した従業員のアカウントがアクセス権を持ったままになっていないかを確認し、削除します。また、NotebookLMの機能アップデートや、新たに見つかったセキュリティリスクに関する情報を、定期的に従業員へ周知し、注意を喚起する教育を継続することも重要です。

さらに、Google Workspaceの監査ログを定期的に分析し、深夜のアクセスや大量のデータダウンロードといった不審なアクティビティがないかを監視する体制も整えましょう。このような継続的な点検と教育を通じて、セキュリティルールが形骸化することを防ぎ、常に実効性のある対策を維持していくことが大切です。

よくある質問(FAQ)

本とスマートフォン、ノートパソコンが鎖でしっかり固定されたイメージ。NotebookLMの情報漏洩防止策やデータ保護の重要性を象徴する写真。

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Nootbook LMは危険ですか?

結論: 正しい設定と運用ルールを守れば、安全に利用可能です。

  • 前提条件:

    • Googleの堅牢なセキュリティインフラ上で動作。

    • Google Workspace(企業向け)アカウント利用時は、データ保護が強化される。

  • 限界:

    • 人的ミスや未知の脆弱性があるため、「100%絶対安全」ではない。

    • ユーザーのセキュリティ意識と組織のルール遵守に依存する。

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NotebookLMの具体的保護メカニズム

多層的な防御により、機密性と安全性を確保しています。

仕組み内容
① データの暗号化アップロードデータおよび通信経路を全て暗号化し、盗聴や不正アクセスを防止。
② データポリシーWorkspace利用時、入力データはAI学習に使用されない(顧客データとして保護)。
③ アクセス制御ノートブックごとに「非公開」「特定ユーザー」「リンク共有」など、権限(閲覧/編集)を細かく設定可能。
④ 監査ログWorkspace版のみ。管理者が「誰が・いつ」アクセスしたかを追跡可能。
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NotebookLM利用時の主要な注意点(リスク要因)

技術的な欠陥よりも、「人的要因」が最大のリスクとなります。

  • 共有設定のミス

    • NG: 安易に「リンクを知っている全員」に設定する(拡散後の回収が困難)。

    • 対策: 共有は「特定の相手」に限定し、権限は「閲覧者」を基本とする。

  • 入力情報の選別ミス

    • NG: マイナンバーなどの個人情報、経営に関わる極秘情報をアップロードする。

    • 対策: 社内の情報分類ルールに従い、「入力して良い情報か」を常に自問自答する。

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ChatGPTにおける情報漏洩対策

ChatGPTは構造が異なるため、以下の対策が必須です。

  • 最大のリスク要因:

    • 無料版では、入力データがAIモデルの学習(性能向上)に利用される可能性がある。

  • 推奨される対策:

    • 法人向けプランの利用: 「Team」や「Enterprise」プランを契約する(学習利用なし・管理者機能あり)。

    • API経由の利用: 自社システムに組み込む(学習対象外)。

    • 設定によるオプトアウト(個人): 設定画面で履歴と学習を無効化する。

まとめ

NotebookLMは、使い方を正しく理解し、適切な設定と運用ルールを組み合わせることで、情報漏洩のリスクを大幅に低減させ、安全に活用できる非常に強力なツールです。情報漏洩の多くは、ツールの欠陥ではなく、共有設定のミスや不適切な情報の入力といった人的な要因によって引き起こされます。これらのリスクは、本記事で解説した対策を実践することで十分に防ぐことが可能です。

具体的には、共有範囲を必要最小限に限定し、相手には「閲覧者」権限を基本とする「セキュリティ設定」、機密情報を扱う場合は入力データが学習に使われない「Google Workspaceアカウントの利用」、そして「PoCによる事前検証」「厳格な権限設計」「導入後の定期点検」という企業導入の3ステップを確実に実行することが重要です。

AIの進化は、私たちの働き方を大きく変える可能性を秘めています。NotebookLMのような便利なツールをリスクに怯えて使わないのではなく、その仕組みとリスクを正しく理解し、賢く安全に使いこなしていくことが、これからの時代に求められます。本記事が、あなたの組織における安全なAI活用の一助となれば幸いです。

Nottaが選ばれる理由

Nottaが選ばれる理由は?

① 日本語特化のAIで業界トップの文字起こし正確率が実現、複数言語の文字起こしと翻訳も完璧対応

② 驚いほどの認識速度で文字起こし作業効率化が実現、一時間の音声データがただの5分でテキスト化

③ 国内唯一のGM・Zoom・Teams・Webex連携できるAI会議アシスタント、事前の日程予約から会議を成功に導く

④ AI要約に内蔵されるAIテンプレートで会議の行動項目、意思決定やQ&Aなどを自動作成
(カスタム要約テンプレートでインタビューや営業相談など様々のシーンでの効率化を実現)

⑤ 一つのアカウントでWeb、APP、Chrome拡張機能が利用でき、データの同期と共有はカンタン

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